CB350Four 車検2回目

CB350Four

2回目の車検。2016年12月、2回目の車検をシオハウスにお願いした。この2年間は2週ごとの週末に泊まりがけで、関東地区の観光地や温泉地に出かけていたが、走行距離は5,000kmほど。時々エンジンオイルが少なくなり過ぎていることがあり、気になっていたのだけれど、ある時にエンジンから異常音がして、2番ピストンを齧らせてしまった。車検に持ち込んだ時も、オイルが少なくなっていたみたい。腰上からのオイル漏れが原因か。

シオハウスのWebsite (https://blog.goo.ne.jp/shioblog) に、当時の詳細な点検整備の様子が写真入りでアップされているが、店主の許可を得て、自分のCB350Fourの整備記録を残すため、すごく長くなるが全文掲載する。マニアには読み応えがあるはず。それでは…….

****************(シオハウス レポート)***********************************

CB400Fが形になりメンテナンスリフトが空いたので早速、車検依頼のCB350Fの不具合箇所拾い出し。この赤丸の車両ですね。(預かって1週間手付かずでした。)必要な部品を先に発注しておかなくちゃです。

依頼事項は、車検整備(24ヶ月点検)、オイル漏れ、クラッチのすべり。試乗して確認するとクラッチは確かに滑っていた。しかし、レバー部で遊びがほとんど無く、遊びを増やすとすべりは収まった。しかし、どれだけ滑った状態で乗っていたかでフリクションプレート、クラッチディスクの状態が気になるところ開けて確認は必要だと思われます。

今回は前回の車検でフルメンテしている為、フロントブレーキの全バラは無くパッドグリスの塗り替えとフルード交換のみ、スイングアームの分解は無し(2年間で走行約5000km)。腰上のオイル漏れが最優先項目となります。エアクリーナーは「合掌!」状態

まずは肝心のエンジンを開けて必要部品のピックアップをしておきましょう。マフラーを外して…。おやぁ、ドライブチェーンがだるんだるん。

ノンシールチェーンは伸びが早いですね。ドライブスプロケットももうちょいかな?

ドリブンスプロケットと3点セットで交換しないと意味が有りませんから。チェーンアジャスターで引ききれなくなったら諦めて交換しましょう。

ありゃ!オイルフィルターが上下逆に組んで有りますね。

オイルフィルターが付く座面の斜め上にフィルターケースのフィンが引っ掛かる凸が有ります。正解はこちら

結構流れ漏れていますね~

ブリーザーカバーガスケットは緑色、一度開けているのは確実

中身は多少スラッジはあるもののきれいなほうでしょう

オーナーさんレッドバロンのオイルリザーブ会員なので定期的にオイル交換されているようなのでそのためですね。当店でも2000kmごとの交換を推奨しています。あまり延ばすとまた汚れ始めます。オイルには清浄作用もありますからたとえ購入時内部がスラッジ堆積で真っ黒なエンジンでも短いスパンでオイル交換をし続ければどんどんきれいになります。抜くオイルの汚れ方で判ります。始めのうちは黒いオイルが出続けますが、繰り返すうちに色が薄くなってきます。

さて本題に戻して、ヘッドはこんな感じ

カムチェーンテンショナースリッパーも交換歴が有ります。2万km走行でこれは無いですからね。

ヘッドを外すと漏れ具合が読めてきます。ナットも結構締め付けトルクが抜けてる感じ。カムチェーンホール左横、前側のナットは締まっていなかった。漏れていた箇所が濡れているので判ります。

#1~#2~カムチェーンホールの間が酷いですね。次にシリンダーを外します。

#1、#2    むむむ!#2ピストン焼き付き

#3、#4

他は軽くスカッフがあるものの普通状態。シリンダー内面は、

#1

#2

傷だらけオーバーサイズピストンでボーリングまたはSTDピストン捜してこのシリンダーだけスリーブ交換するか?内燃加工が絡むのでもう年内は無理だなぁ。

#3、#4

外したピストン。酷いな。

オイルが入っているか確認

ゲージに付かないし。覗くと…

居ないし。   流れ出るほどは漏れていないしどうしたことか!?

抜きましょう

なんと1.6ℓしか出てきません。(普通オイル交換で2.5~2.8ℓくらいは出てきますね。心配なのでフィルターケースを外して中に金属粉が居るかチェック(向きを直したいですしね)。

とりあえずメタルが酷くかじっていることは無さそうですね。軽いかじり程度ならなんとか走れるかな。クラッチも確認しましょう

良かった焼けてなかったです。ばらした部品で検証。

燃焼室やピストンヘッドを見る限りオイル上がり、下がりの兆候は見られない。ヘッドガスケット面から出ていたのは確実。

オリフィスバルブ~スリーブとシリンダーの隙間~カムチェーンホール周りとオイルが繋がっているのが興味津々。なぜこのスタッドボルトにオイルが伝ってくる?

全面液体ガスケットが塗られ黒いシリンダーガスケット。剥がすときは非常に楽だが貼り付かないということは…。ちなみに使われていたのは社外ガスケットセット。

これまでの経験上純正品ほど精度が良くない。増し締め(トルクチェック)も複数回行った方が良い。少し走って熱を充分に掛けた後で再度開けて確認は必須。例えばヨシムラのボアアップキットの場合幾らでも締まります。説明書にも2000kmごとのトルクチェックを指定しています。

オーナーさんに事情聴取するとこのオイル消費大は今回が初めてじゃ無い。むむむ!原因はなんだろう?

っていうか、初めてじゃなければ乗る都度オイル量の確認をしても良さそうなもの。

この前の日曜日も初めてお越しになったお客様で、某オークションで買ったというCB400Fでお越しになり

「白煙が出るんですよ」と。集合管のエンド部分はバッフルごとびしょ濡れ。ウチはこんな状態ですぐには診れませんから、「オイル量をちょこちょこ確認しなさいよ」とアドバイス。本来オイル量の確認は運行前点検の1つ。心当たりのある人は確認しておいて下さいね。タイヤの空気とは訳が違う。オイルが無ければエンジン壊れちゃいますからね。

シリンダーの修復をどうするか?

例えば、中古良品ピストン+当店オリジナルスリーブで#2シリンダー部だけ修復またはオーバーサイズピストンで全気筒ボーリングか。画像は0.25mmオーバーART製ピストン+純正リング(自社修理用非売品)

こちらは海外製0.5mmオーバーサイズピストンさまざまなアプローチを選べますが

クランク周り(メタル)のダメージの可能性もあり、安上がりな中古良品スリーブ+中古良品ピストン+シリンダー上部面研(スリーブを入れ替えた為高さを合わせる)。この方法で進めることにする

しかし、内燃加工が伴うと年内の完成は無理かもしれない。当店の利用している内燃機屋は、やたら時間が掛かる。個人からは直接は受けずに業者ONLYそれでも依頼が集中するのと一人親方ということもありまったく時間が読めない。当店で単発の内燃加工の依頼を受けないのはそのため。

年内は無理かと思われていたが、火曜日にシリンダー上部面研が完了し戻ってきた。分解したエンジンパーツを洗浄、この日も穏やかだったので助かりました。洗浄~乾燥後、新品部品と共に並べます。

こんな画像を載せると、シオハウス、エンジンO/H再開か!?なんて勘違いされそうですが。あくまでもオイル漏れの修理のため。車検/定期点検整備とあわせてお受けしているだけです。※エンジンO/Hとしてはお受けしていません。ここまで開けておいてO/Hじゃないのか?と突っ込まれそうですが、O/Hの定義は人さまざま。当店では単にガスケット交換、ピストンリング交換の範疇。ちなみにヘッド、ピストン、バルブもカーボンこそは落としますが、バルブは擦り合わせ程度、最低限の作業となります。

O/Hであれば、20℃の恒温室での分解部品の計測、バルブシート修正(シートカット)、バルブフェイス面修正、カムシャフト修正、などが加わります。

また、お受けするのも必要があると判断した場合、滲み程度ではもう少し我慢なさいと帰します。よっぽどシリンダーフィンにしずくが垂れるくらい漏れが激しい場合、オイル上がりや下がりでもマフラーエンドが濡れてしまってるくらい酷い場合です。車検場で検査官に突っ込まれては困るので対応しているわけです。

サクサク組み立てて

この車両は車体番号CB350F-108xxxxと後期の車両。初期モデルと結構違いが有り興味津々

カムスプロケットに注目。本来、ゴムのダンパーが焼き付けてありますがそれが無い。CB400F用とも違う。

クラッチすべりは、ワイヤー調整で収まったがプレートの焼けのチェックで開けたもの。結構なスラッジ。

早めのオイル交換を続ければきれいになるでしょう。せっかく開けたらこの儀式も必須

緩み止めを塗り締めこんでおきます。カムシャフトを組んだ時点でこの日の作業は終了(すでに深夜ですが)。翌水曜日、もちろん年末進行で店主のみ作業。ヘッドのナットのトルクチェックを行い。組み上げます。

キャブレターもちょいと違いが見られます。

ステープレートの動き止めも初期はピンとは別に蓋が付きかしめてある。この車両はCB400Fに見られるピンが圧入されているだけ。また、各ビス、パーツのメッキも初期はユニクロ(シルバー)ですがこの車両はクロメート(黄色)が混じっている。

マフラーを組む前に足回り。CB350Fの場合はマフラーが結構邪魔。フロント、初期は6角ナットとプレートタイプの緩み止め。

CB400Fと同じフランジUBSナットのみ。リアは本来内部に穴が開いていてダンパーブッシュが見えるのだが

この車両はCB400Fと同じハブ。スプロケットの根元は摩滅を防ぐ為、グリスUP。

Before 

After 

なんとか夕方からの家族サービスタイムまでに作業は完了。車検予約も間際だが、翌木曜日の2ラウンドに予約入れられた。珍しいことにフルノーマル車両が2台!!

ガソリン補給して鋭気も養い。翌日の今日(木曜日)、ちゃっちゃと部品のピックアップを済ませ、書類を書き上げ車検場へ。昨日の天気予報で雨は夕方からと云っていたので、実走で向かう。昨日ほどではないが良い陽気が良く気持ちよく車検場へ。

無事通り。

12/24

3連営業日のお中日の土曜日。今日も朝から目が回る勢い。給湯器の交換工事で朝イチで業者が来る為、周辺の片付け。

午前中の車両引取りにあわせ、2台の暖機。

10時過ぎに緑のCB350Fのお客様が栃木県より到着(HM栃研の近所、うらやましい)。作業の内容はブログで確認はされていますが、交換部品をお見せして不具合状況の説明。

もちろん、交換した部品はお客様のものですから、「お持ち帰りになりますか?」とお伺いする。たいがいのお客様は「処分してください」と置いていかれますが、中には記念に持ち帰る方もいらっしゃいます。

そうこうしてる間にシルバーのCB350Fのお客様も到着。こちらは千葉県なのでご近所です。こちらのお客様は焼き付いたシリンダーとピストンなど交換部品をすべてお持ち帰りになりました。

帰り際に、「身体気をつけてくださいね、ずっと乗るつもりですから」と釘を刺された。お気遣い感謝いたします。病気になると一大事ですね。

       SHIOHOUSE
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2回目の車検もかなり大掛かりな修理と整備をお願いしたので費用はこの通り。エンジンはほとんどオーバーホールしてもらった感じだし、#2ピストンの交換など、徹底的にやってもらったので、安心感は爆上がり。

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